鷹のぼせの独り言

外科系医療者で3児の父親です。ご覧のとおりの“鷹のぼせ”です。医療、教育、書評、そしてホークスについて熱く語ります。

組み体操論議で思ったこと

最近の子どもたちは組み体操も拒絶するのか、と最初は頭にきた

少し前の話ですが、運動会シーズンに組み体操論議が盛んでした。組み体操は小学校〜高校の運動会の花型競技で、生徒たちが団結し自分たちの体力を表現していきます。成功した時の達成感は生徒たちはもとより指導する教員にとっても得難い体験なのでしょう。またそれを見守る保護者たちにも感動を与えるようです。

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しかしその一方で、練習の段階で怪我が多いことが問題となっていました。また骨折などの外傷が多く報告されています。そのため一部の生徒や保護者たちからは組み体操をボイコットする動きが出ていました。それに対して教師たちからは逆に反発の声も上がっており、怪我をしないように指導体制を見直す、などの話になっています。名古屋大学の内田良さんも組み体操のリスクについて緊急提言しています。

僕が初めてこの話題に触れた時は、最近の子どもたちは辛抱することが苦手で、そのくせ自分たちの権利は当然のごとく主張する、と正直苦々しく思っていました。

 

話はそんな単純ではなかった

しかし話はそんな単純なものではないことが段々とわかってきました。僕が組み体操してたのはもう20年以上も前の話だけれど、その頃高校では7段ピラミッドまででした。でも現在はピラミッドの高さがさらに高くなり、かつ競技年齢が低年齢化しているといいます。新聞で実際に中学生たちが10段ピラミッドを完成させていた写真を見たけれど、最下段で支える人数が圧倒的に少ない、と感じました。後方からのサポートはあるようですが、どう見ても危ない‥

 

ピラミッドが崩れるときは内側に落ち込むように崩れていきます。だから最下段にはある程度人数を揃え、体の力を中央に押し付けるようにバインディングしていました。よって10人ちょっとの人数で最下段を組んで、その上9段を支えるのは難しいと感じました。体が小さく、体重も軽い小学生あるいは中学生だからこそ出来るのかもしれないのですが、やはり危ない‥

だがこの問題を考えていて感じたことは、自分たちの世代と比べて競技内容が明らかにハイレベル化していることに驚きました。

 

体操競技フィギュアスケートなど技の難易度が高まっている

羽生結弦が自己最高得点を更新し続けているフィギュア・スケートや、内村航平を代表とする男子体操も10年前と比べて、ウルトラ難度の技術が向上しているのが明らかです。アングロ・サクソン系と比べて明らかに体格の劣る日本人がオリンピックの大舞台で活躍出来るのは、栄養学に基づいた科学的な食事摂取によって体格差を克服し、さらに技術の向上を目指してトレーニングを積んだ結果です。1964年の東京オリンピックの時代と比べても、現代は食生活が豊かとなり基礎体力が向上したと考えられます。またスポーツ理論の進歩に基づいて構成された科学的なトレーニングを実践することによって技術が格段に向上しました。適切な練習メニューを作成出来たことも要因の一つです。更にナショナルトレーニングセンターの設立や、ハイスピードカメラの導入やITを駆使した画像解析など、トレーニングをサポートするハード・ソフト両面の整備が挙げられます。

 

進化しているのはアスリートだけではなかった

しかし進化しているのは何もトップアスリートだけではありません。スポーツ庁発表によると70台後半の世代のみならず青少年の体力は年々向上しているようです。食生活の欧米化は生活習慣病ももたらしましたが、栄養状態の改善による基礎体力の向上が得られるようになりました。人々は健康やトレーニングに対する関心が向上し、これらに関する情報はネット上に氾濫しています。トレーニング法についてもYouTubeなどでいつでも何処にいても視聴でき、一昔に比べると手軽に実施することが出来ます。メディアやITの発達はあらゆる年代にトレーニングの機会と手段をさまざまな情報として提供できる時代となっています。

運動会における組み体操も僕が小学生だった時代とは全く異なり、体力も技術も高まっている現代では求められるモノが一段と高いレベルになっているのです。しかし安全面についてはその進歩からまだまだ取り残されていると思います。次のステップとして組み体操を始めとした学校体育の安全面での進化が求められる時代になってきました。

 

以上鷹のぼせの独り言でした。