鷹のぼせの独り言

外科系医療者で3児の父親です。ご覧のとおりの“鷹のぼせ”です。医療、教育、書評、そしてホークスについて熱く語ります。

裸の王様にならないために上司が考えなければならないことはなんだろうか?

部下に対して不満がある上司の方々へ

上司にとって優秀な部下がいるほどありがたいことはありません。何も言わなくても自分の意を汲み取って先回りして仕事を進めてくれれば、これほど楽なことはありません。その分全体的なことを考える余裕も生まれてきます。しかし残念なことに優秀な人材が常に側にいるとも限りませんし、育っていないこともあります。部下の仕事具合に苛立ちが生じると、つい文句を言いたくもなります。しかし上司は指導しているつもりでも、部下には必ずしも上手く伝わっていないことがあります。あなたは自己主張が強いタイプですか? それともむしろ控えめな表現を好みますか? 自己表現の方法は大きく2つに分かれます。非主張的および攻撃的自己表現です。

 

非主張的自己表現とは?

 コミュニケーションの中で相手との葛藤を避けようとするあまり、相手に遠慮した発言にとどまってしまうことがあります。一見相手を尊重する表現のように思えますが、実は大事な決断を相手に委ねてしまっています。また考えを明確にしないことで、自分にも相手にも無責任になってしまうことが生じます。一見いい人のように見えますが、組織の中では全身を阻む人材になる危険性があります。この心理は、相手に合わせているつもりでも、実は相手に甘え依存する心理が働いているのです。

 

攻撃的自己表現とは?

一方、自分の主張を強く通すと一時的に満足感が得られるし、優位に立って勝った気分が得られます。しかしそれを続けていくと、周囲の人に敬遠され、孤立することになります。権力や権威のある立場の人、知識や経験が豊富な人、役割や年齢が上の立場の人は攻撃激自己表現を無意識のうちにしてしまいがちです。この攻撃的自己表現も実は相手に依存し甘える心理につながっています。攻撃的自己表現が習慣になると、他者の従属的態度や支えなしには自己を維持出来なくなり、孤立を招きます。まさしく「裸の王様」の状態です。組織のなかで、上司は多少なりとも攻撃的自己表現をします。部下はむしろ非主張的自己表現しか出来ない状況にあるのならば、上司はいずれ「裸の王様」となり孤立してしまいます。有用な情報は何も伝わってこず、自己満足の世界に陥り、周囲からは陰口を叩かれてしまいます。もちろん組織にとっても進歩を妨げ負の側面しかもたらしません。では上司はどのように心がければよいのでしょうか。

 

アサーティブな自己表現とは、自分も相手も大切にすること

裸の王様にならないためにはアサーションを修得する必要があります。アサーティブな自己表現とは、まず自分の考えや気持ちを捉え、それを正直に伝えてみようとすることから始まります。自分の考えを相手に伝えたら、次に相手の反応を素直な心で受け止めようと努めます。アサーションとは自分が伝えたいことを非主張的にも、攻撃的にもならず、出来るだけ素直に伝えると同時に、話した後には相手の反応を待ち、対応することを含んだ自己表現です。

 過ちや失敗に対して「許さない」というメッセージを与え続けられた子どもは、常に萎縮し、のびのび行動したり試行錯誤を試みたりしなくなります。失敗を恐れるあまり消極的になると、体験の積み重ねが減少し再び失敗する、という負のスパイラルに陥ってしまいます。これは組織でも同じです。そのような状況では、部下に自発性や創造性を発揮させることは困難となり、依存的な部下しか育ちません。過ちや失敗は起こりうることであり、その時は責めるのではなく、きちんと理解出来るように指摘し、繰り返さないようにするにはどうしたらよいかを確認することが大切です。それは感情的にならずにきちんと「叱る」ことであり、感情的にあるいは攻撃的に「怒る」こととは一線を画す必要があります。

 

感情は自分を照らす指標と考える

 感情は貴方自身の状態を教えてくれる信号と考えてみましょう。それはあなた自身に変化を促している可能性があります。感情は必要に応じて表現することが大切で、決して封印するものではありません。ただし苛立ちをそのまま表現して良いということではありません。自分の苛立ちが発している信号の真意を相手に伝えることが大切なのです。絶対に部下を傷つけないことは不可能です。もし傷つけてしまったら、「そんなつもりはなかった」と自己弁護するのではなく、部下が傷ついたことを素直に認めることが大切です。そこでは歩み寄りや合意に達するための話し合いが必要であり、その時こそ感情的な表現を用いるのではなく、論理的思考や抽象的な言語表現が使われるべきです。決して感情的でない表現を心がけていれば、裸の王様になることなく組織の運営が可能となるでしょう。

 

 

アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法 (講談社現代新書)

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