鷹のぼせの独り言

外科系医療者で3児の父親です。ご覧のとおりの“鷹のぼせ”です。医療、教育、書評、そしてホークスについて熱く語ります。

「アナと雪の女王」とアドラー心理学

Disney「アナと雪の女王」は2014年春に日本で公開され、瞬く間に大ヒット。主題歌というべき「ありのままで」は巷で聞かない日がないくらいメディアで取り上げられ、我が家でも年端の行かない末娘まで「♫ありの〜 ままの〜♫」と唄っている始末です。「ありのままで」は、触ったものをすべて凍らせてしまう能力をもってしまった女王エルサが、その特殊な能力ゆえにコンプレックスを抱えてきた人生に終わりを告げ、前向きに歩いて行くという決意を表明した歌です。

 
戸惑い傷つき 誰にも打ち明けられずに悩んでた それももうやめよう
ありのままの姿見せるのよ ありのままに自分になるの
 
どこまでやれるか 自分を試したいの そうよ変わるのよ私
これでいいの 自分を好きになって これでいいの 自分を信じて
 
光浴びながら 歩き出そう
 
コンプレックスに打ち克ち、幸せをつかもうとするその姿勢は、最近読んだアルフレッド・アドラー著の「嫌われる勇気」の内容と通ずるものがありました。アドラーは、フロイトユングと並んで「心理学の3大巨頭」の一人で、「どうすれば人は幸せに生きることが出来るか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な答えを提示しています。
 

 

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 

 

自己受容とは

アドラー心理学のキーワードの一つが「自己受容」です。これは、仮に自分に出来ないことがあるとしたら、その「出来ない自分」をありのままに受け入れ、出来るようになるべく前に進んでいくことです。ありのままの「このわたし」を受け入れること。そして変えられるものについては、変えていく「勇気」を持つこと。それが自己受容です。アナ雪の「ありのままで」はまさにこの自己受容の世界を表しています。一方、「社会と調和して暮らせること」や「人々は私の仲間であるという意識」は、他者信頼に繋がり、他者貢献へ続いていきます。自己受容出来るからこそ、裏切りを怖れることなく「他者信頼」することが出来る。そして他者に無条件の信頼を寄せて、人々は自分の仲間だと思えているからこそ「他者貢献」することが出来る。さらには他者に貢献するからこそ、「わたしは誰かの役に立っている」と実感し、ありのままの自分を受け入れること、「自己受容」が出来る。このように「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」の3要素は三角関係となっており、1つが上手くハマれば全てが好回転するようになっているのです。
 

幸福の定義

人間にとって最大の不幸は、「自分を好きになれないこと」です。この現実に対してアドラーは「『この私は共同体にとって有益である』、『私は誰かの役に立っている』という思いだけが自らに価値があることを実感させてくれるのだ」と述べています。他者に貢献しているという「貢献感」が持てれば人は幸福になれる。すなわち「幸福とは貢献感である」と定義しています。まさしく自己受容は、幸福への扉だと言えるでしょう。
 

人生に意味を与えるのは自分自身

アドラー心理学の究極の思想がこの言葉に凝縮されていると思います。我々はもっと「いま、ここ」だけを真剣に生きる必要があります。人生は連続する刹那であり、過去も未来も存在しません。我々は困難に見舞われた時にこそ前を見て、「これから何が出来るのか?」を考えるべきなのです。私の恩師は「人生、順風満帆の時もあれば、逆風に見舞われる時もある。良かれと思ってとった行動が裏目に出たり、逆に『これはアカン』と思った事態が好結果に結びついたりする。先のことは誰にもわからん。だとすれば、その時、その場面でベストを尽くす以外に道はない」とよく言っていたものでした。これはアドラー心理学の「今、ここを真剣に生きる」との思想と相通ずるものがあります。「いま、ここ」に集中して、真剣に生きることができれば、自分自身が人生に意味を与えることが出来るのでしょう。エルサの唄う「ありのままで」も今、この瞬間を前向きに、真剣に生きる生き方をしようと宣言した歌なのです。