鷹のぼせの独り言

外科系医療者で3児の父親です。ご覧のとおりの“鷹のぼせ”です。医療、教育、書評、そしてホークスについて熱く語ります。

論理的思考力を高めよう

「『ビジネスマンの国語力』が身につく本」(福嶋隆史著)を読みました。帯には「会議・交渉・プレゼン・報連相・企画書・メールなどなど あらゆる場面で効果バツグン!」「考えがまとまる、伝わる、説得力がアップする!」と記載されています。以前本ブログで

国語力を上げるには? 〜音読のすすめ〜 - 鷹のぼせの独り言

を記載しましたが、この記事は子どもたちを対象とした内容でした。では実際に社会人にとって国語力の活用とは実社会においてどのように役立ち、そのトレーニングはどのようにすればよいのでしょうか?

 

国語力は論理的思考力です。これは「複雑なものを単純に」、「難しいものをやさしく」表現することです。論理的思考力とは一見バラバラの言葉や文章を関係付けし、整理していくための力であり、これは以下の3つに分類されます。すなわち①言いかえる力 ②くらべる力 ③たどる力 の3つです。①の「言いかえる力」は一見バラバラに見えるものの中に共通点を見つけ出し整理する力です。②の「くらべる力」は対比関係を見つけ出し整理する力のこと。③の「たどる力」はバラバラに見えるものの中に結びつきを見つけ出し整理する力のことです。

 
本書ではこのうち①の「言いかえる力」について詳しく述べています。
 

わかりやすく伝えること

一般社会で報告書、企画書などを作成する際には、当然のことながらわかりやすく相手に伝わりやすい文章を書くことが要求されます。「誰の」「何を」「どのように」「どうするのか」を明確にし文章を構成していく必要があります。著者が本書で最も強調している「言いかえる力」とは「抽象化力」と「具体化力」の2つから構成されます。「抽」という字は「引き出す」の意。「象」は「形」を意味しています。つまり「抽象」とは「形を引き出すこと」で、すなわち「特徴を引き出すこと」です。伝えたいメッセージのわかりやすさを強調するには「具体化から抽象化へ、逆に抽象化から具体化へ」と交互に言いかえることが良いようです。具体的な事例から本質的な特徴を引き出す。逆にその特徴から新たな具体例を提示する。この両者がお互いに補い合いながら繰り返されることにより、わかりやすさが生まれ、伝わりやすいメッセージとなっていきます。これは、例えばブログを書くときや、講演をするときにも重要なポイントだと考えられます。抽象的な記述にとどまっているよりも、具体的な事例を提示したほうが読みやすいし、多くの共感を得ることが可能になると思います。「言いかえる力」は、コミュニケーションの柱となりうるのです。
 

大切なのは内容より形式

本書の中で述べられている内容で、なるほどと思ったポイントの一つがココです。私は新しいことに取り組むとき格好(形式)から入る事が多いのですが、自分自身もそれは邪道だと思っていました。卑近な例として、何か新しい楽器を始めることになったとしましょう。はじめにお気に入りのプレーヤーの演奏テクニックを習得しようと試みるのではなく、そのプレーヤーのスタイル、ファッションからマネをする、とか‥ しかし、本書では一見邪道とも思える「形式」から入ることを許容しています。例えばブログを書く際に、はじめのうちは内容に拘る必要はない、と言っているようなものです。文章を書くという行為は、自分の中にある既知の情報を整理し発信することですが、そのプロセスの中で論理的思考の技術が少しずつ磨かれていきます。この過程で「もっと本を読もう。本を読めば文章力がつくはずだ」と考えるのではなく、「もっと文章を書き、話し、発信する練習をしよう。そうすれば論理的思考力がつくはずだ」と考えることが大切です。また話せば話すほど、書けば書くほどに自分の「無知」への気付きが生じ、「知」への欲求が高まります。すると「もっと本を読もう、もっと良質の情報を選ぶようにしよう」との知的欲求が高まります。これが「アウトプットがインプットを要請する」状態につながります。まずアウトプットすること、ブログを書くこと、講演すること、様々な行動の積み重ねが必須です。行動の内容は形式を追求する過程で必然的に求められてきます。発信の技術を磨く時にこそ、受信の技術も磨かれる。こう考えると、発信も受信も実は表裏一体の行動であることに気づかせてもらった1冊でした。
 

 

「ビジネスマンの国語力」が身につく本

「ビジネスマンの国語力」が身につく本