鷹のぼせの独り言

外科系医療者で3児の父親です。ご覧のとおりの“鷹のぼせ”です。医療、教育、書評、そしてホークスについて熱く語ります。

国語力を上げるには?  〜音読のすすめ〜

小学生の娘の国語の成績が良くありませんでした。漢字の読み書きは出来るのですが、読解力が弱いとのことです。生活状況を見ていても、とにかく読書量が少ないようです。しかしこればかりは親の後ろ姿を見ている可能性もあり、両親共に内省をしている状態です。そこで国語力を上げるにはどうしたらよいのか、色々と考えてみました。

 

まずは音読から

読む力と書く力は表裏一体です。読む力がつかないと書く力もついてきません。そこで読む力をつけるにはどうしたらよいか考えてみました(書く力については後日掲載予定です)。教科書を音読させてみると、かなりの小学生がひらがなの部分を曖昧に読んでいるようです。これは早く読み終えてしまいたいという気持ちや次に出てくる漢字の方に注意が向いてしまっているからと思われます。そして、音読がこのようならば、黙読ではもっといい加減な読み方をしていると考えて良いでしょう。これでは読解力など身に付くはずもありません。このためまずきちんと読むことを子どもに伝えていくこととしました。繰り返し声に出して読むことで内容の理解が深まり、漢字の読みも自然と覚えるようになります。また、無理をせずに暗記さえできるようになることが期待出来ます。

教科書の音読 -基礎国語学習プリント

 

音読は眼と口を運動させるばかりでなく、眼で字を追うことで情報を脳へ入力し、情報を処理し、口から出力するというインプット・アウトプットが連続的に含まれている行為です。さらに音読は声をだすことで耳(聴覚)を用い、それが前頭葉の前頭前野を刺激し活性化させます。発語などの運動性言語は優位半球の前頭葉で支配されています。また耳から聞いた言葉を理解する感覚性言語の支配は側頭葉です。最近の機能的MRIを用いた研究では、音読の際には前頭葉・側頭葉のみならず頭頂葉にも神経活動が認められています。これらの複数の脳葉が機能的に繋がりネットワークを形成しており、音読はこれらのネットワークをより強固にする効果が期待できます*1

 

教科書の音読

では具体的にはどのように進めればよいのでしょうか? 以下のチェックポイントを確認します。

  • ひらがなの箇所を、特に文末を丁寧に読んでいるか
  • ゆっくり一字一字を丁寧に読んでいるか
  • 句読点は息継ぎの場所
  • 読めない漢字にはふりがなを付ける
  • 毎日の習慣とする

周りで聞いている大人が、読んでいる内容をきちんと理解出来るようになれば、その子は内容をしっかりと理解しながら読むことが出来るようになっているはずです。

 

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生活環境も大切

両親が読書好きで本に囲まれた環境に育った子どもは、自然と本を読むようになります。大人が読書を楽しんでいる姿を小さい頃から見て育った子どもは、読書に違和感を覚えず自然と親しんでいくことが出来るでしょう。子どもは、自分の両親がどんな本を読んできたのか、自宅の本棚を興味深く見ているものです。可能であれば、本棚に親がこれまでに読んできた本をズラリと並べておくのも子どもの読書環境を整える意味では良いかもしれません。しかし現在の住宅環境ではスペースに限りがある場合もあるでしょうから、スマホタブレットでも良いので本を読んでいる姿を子どもたちに見せることも大切だと思います。

 

脳トレとしての音読

ただし音読は子どもだけに有用であるわけではありません。日本語に限らず、語学は音読の繰り返しが基本です。これは中学・高校で習う古典学習にも有用です。また認知症予防のトレーニングとして用いられることがあります。例えば新聞のコラムや社説を書き写す、音読するトレーニングがあります。ただ黙読するだけでは情報が次々と流れ去ってしまうため、手と口を使おうということです。書き写すためには、ある分量の言葉のまとまりを一時的に脳の中に保持しておく必要があります。また音読は保持した情報を解釈するトレーニングを自動的に行えるというメリットがあります。特に高齢になってくると会話をする機会が少なくなることがあり、それだけでも認知症状が進行してしまう場合があるでしょう。会話・発話する能力を維持するためには、一日あたり最低でも1000語の発語が必要とのことです。これは新聞のコラムの約半分に相当するため、コラムを使ったトレーニングは脳トレとしては丁度良い分量かもしれません。

 

これで娘の国語の成績が上がれば良いんですけれど…

 

 

*1:

Cerebral Cortex August 2010;20:1799-1815 doi:10.1093/cercor/bhp245

Neural Systems for Reading Aloud: A Multiparametric Approach