鷹のぼせの独り言

外科系医療者で3児の父親です。ご覧のとおりの“鷹のぼせ”です。医療、教育、書評、そしてホークスについて熱く語ります。

てんかん患者意識調査の結果を見て

東北大学てんかん学分野の中里教授が監修した、てんかん患者の意識調査の結果が4月4日の日経メディカルに掲載されていた。

 これによると患者と医療者の疾患に対する意識の相違が見て取れる。

1)てんかん治療のゴールはどこか?

てんかん薬内服によって発作が止まったことのみを捉えて、「てんかんが治癒した」とは言えない問題がある。発作がほとんどない軽症であっても、その7割の患者が悩みを抱えている。個人の状況も異なるので一概にはまとめられないが、「患者が自動車運転免許を所持し、会社や学校に通って普通の生活を送れるようになるまでは合格と考えるべきではない」という姿勢が医療者側にも求められる。

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2)脳波ビデオモニタリングが重要

薬剤による治療にも関わらずてんかん発作が抑制されなければ、より正確な診断が求められる。その際には「長時間ビデオ脳波同時記録(脳波ビデオモニタリング)」検査が推奨される。しかし調査によると検査を受けたのは全体の7%、難治例に限っても14.8%にすぎない、という問題が浮き彫りになった。ビデオモニタリングを実施すれば、てんかん診断が確実に出来ることが多い。診断が確実になれば、使用する薬剤が自ずと決定するし、外科治療の適応の有無も判断出来る。しかし同検査が実施出来る病院は限られており、専門病院へのスムーズな紹介・逆紹介が必要となる。このためにも医療者間での「てんかん診療ネットワーク」の活用が重要であり、てんかん診療専門医とかかりつけ医の双方向の連携が確立されなければならない。

 

患者と医療者のみならず、医療者同士においても、てんかん診療の質の向上のためには、お互いに言葉を重ねてこれまで以上にコミュニケーションを図って行く必要がある。そのためにも専門病院は更なる診療のレベルアップを目指さなければならない。