鷹のぼせの独り言

外科系医療者で3児の父親です。ご覧のとおりの“鷹のぼせ”です。医療、教育、書評、そしてホークスについて熱く語ります。

あたらしい書斎〜情報のフローとストックについて

司馬遼太郎は書斎でL字の机を使っていたらしい。

そんな紹介より始まる本書の前半は文人の使用していた書斎の案内や、書斎の作り方の紹介から始まる。それはあたかも書斎史のようでもあり、またインテリア雑誌のようでもあった。書斎を構成する備品について、IKEAの製品の紹介もあるほどだ。

しかし後半になるにつれ内容は一変し、情報の収集と発信の方法に主題が移って行く。 

  • まずは本の整理法。現在読んでいる本は机の手元にいわゆる「積ん読」の状態にしておく。あとで読み直す本は本棚の「仮置」スペースに保管しておく。後日必要がないと判断した本は「処分」に回す。こうして選別された本のみが「保存」エリアに移動出来る。これはPDFで保存した論文の整理にも適用出来る。 

次いで考えをまとめるデジタル情報編集のコツ。まずデジタル情報には以下の2つがある。

フロー情報はその場の空気や前後の会話や思考の流れといったコンテクストーーつまり周辺情報と密接なつながりをもつ。一方周辺情報を含めてまとめられたものはストック情報として、当事者以外とも情報共有を可能にする。考え続けていたものをストック情報としてまとめておけば、そこから次のアイデア、つまり次のフロー情報を生み出しやすくなる(183-186頁)。

フロー情報は常日頃より適宜収集しておき、それらをよく検討してストック情報としてアウトプットする。そのためには普段からアンテナを張り巡らし、ずっと勉強していないといけない。アウトプットの手段としてはブログが良さそうであるが、short communicationの点からはfacebookでも良いだろう。

  • ストック情報を公開するブログの効用

     SMSはフロー情報のやり取りには向いているが、ストック情報の管理にはブログが良い。またSMSでは過去の発言が追いにくいことが多く、この点もブログが有効である。ブログでの情報共有は、SMSでの対話を促進することにもなり、SMSとブログで相乗効果が得られる。これは巡り巡って、情報をインプットすることに繋がる(193-197頁)。 

これを自分の仕事の情報発信について言い換えると、フロー情報Facebookメーリングリストで送る。その後のストック情報はホームページを更新するか、新たなブログを立ち上げるか。とにかく「場」を設けなければならない。

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しかし情報発信には地道な努力が必要と述べている。

一般人ならばウェブでの活動が軌道に乗るには、SMSを毎日利用して半年、ブログ記事ならば300〜500本になるまでは、準備期間と思って地道に活動して行くこと(200頁)。

ブロガーになるには300本以上は記事を書かないと認めてもらえない、とのこと。やはり数をこなす必要がある。

そして現代において情報発信を行う上での覚悟を問うている。

情報共有の敷居が低くなった現代では、共有に消極的であることがリスクになる可能性がある。まずは自分が楽しめることや、興味を持って学び、考え続けられることをコツコツ続けて行くことが大切(205頁)。

アウトプットを躊躇してはならない。共有を恐れない。情報の正確性を求めるあまり、スピードが損なわれても良くない。自分の仕事の情報提供もこのポイントを押さえる必要がある。

そして最後はまた司馬遼太郎で締めくくっている。

司馬遼太郎のL字の机は長い間私のあこがれでした。彼の作品は「コミュニケーション」というフロー情報と、「蓄えた知識」というストック情報の結晶なのです。なるほどL字の机の向こうには、考えていた「あたらしい書斎」の原型があったのでした(あとがき、278頁)。

キーワードは「フロー情報」と「ストック情報」だった。

あたらしい書斎

あたらしい書斎